ひろいへや おわらないうた
狭いと思ってた部屋は意外と広く。
如何にお前がこの場所を散らかしていたのかがよく分かり。
そして同時にお前がどういう存在だったかもまた。
俺は今思い知らされている。
忘れられないのはお前の最期の言葉。
俺が護りたいと思ったのは亜月でした。
俺を護ってくれたのは灰でした。
――俺を愛してくれたのは、椿紀でした。
そしてお前は言わなかった。
お前が誰を想っていたのかを。
最初は敵だった。
だけどお前は俺を逃がした。
そして気付けば、同じ部屋で。
直ぐそこで無防備に眠っていた。
寝る場所なんてない程に物がのったベッドで。
一番最近片付けたのは、一昨日だった。
だから今、この部屋はまだ綺麗だ。
お前のデスクに散乱したCDのみが。
妙に生活感があって。
使ったら切れと散々言ったのにつけっぱなしのスピーカー。
俺は未だにその電源を落とす事が出来ない。
この言い様のない喪失感は。
あまりに広すぎた部屋のせいか。
あまりに占め過ぎた存在感か。
全く重なり合わなかった音楽の趣味。
つけっぱなしのスピーカーからは、俺の知らないアーティストが。
終わりなき歌を繰り返す。
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