繋がっていたい

 

愛してると百万回繰り返した所で。
相手の本心など分かる筈もない。
ただ相手を絶対的に愛しているからこそ。
相手も自分をそう思ってくれているのだと。
そう、思い込み言い聞かせているだけに過ぎない。
それでも。
それでも。

君と繋がっていたいと、思う。

牙聖が風呂から上がると、ベッドの上には無防備に眠る葵威の姿があった。
待っていたのだろうか、本格的に眠るつもりはなかったらしく、衣服もそのまま、体には何もかけていない。
一定のリズムで繰り返される呼吸、上下する胸を少し見つめた後。
葵威の少し冷えた手を取り、机の引き出しからあるものを取った。
それをゆっくり、冷たい指へと通していく。

「軽く見られたもんだな」

唐突にかけられた声にびくん、と反応し、牙聖は葵威から離れた。
狸寝入りだったのか、開かれた葵威の瞳から、意識が完全に覚醒している事が伺えた。
にや、と人の悪い笑みを浮かべながら、自分の左手の薬指に嵌った銀色の其れに口づける。

「こんなもので俺を繋ぎとめたつもりか?」

「……っ」

ぎし、とベッドを軋ませ葵威が身を乗り出してくる。
そして牙聖の腕を掴み、まるで圧し掛かるように這い上がる指。
強く引っ張られ牙聖の体は転倒した。
完全に組み敷かれてしまった、らしい。

「俺を繋いでおきたければ、完全に拘束しろ」

誰の姿も見ぬように目を抉れ
誰の声も聞かぬように耳を潰せ
誰と会話せぬように口を閉ざせ
誰の手も取らぬようにてのひらを落とせ
何処へも行かぬように脚を失くせ
そして誰の事も思わぬように、心そのものを――。

「……しないよ」

「何故?」

「俺はお前を繋いでいたいんじゃなくて、お前に繋がれていたいの」

牙聖もまた、人の悪そうな笑みを浮かべ葵威の手を取った。
そしてそのまま縺れ合う。
流される様に、流される侭に。
互いに繋がり合う為に。
愛し合っているという暗示をかける為に。


朝が来るまで君は俺の物。
そして俺は、君の物――。

 


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何時もの二人です(苦笑)一番愛着あるので書きやすいっちゅーか。
モノなんかで繋ぎとめておける程可愛らしい奴じゃあないです。
葵威サンはこう見えても完全に受けっ子なんですがね、鬼畜襲受。
性格の悪い話ですが、有難う御座いました(2006/03/03)

 

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