全ては神の御心の侭

 

注意:雰囲気が15禁的なので念のためワンクッション。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


おもしろいことをおしえてやろう。

誰が気付くだろう。
軍本部の一番奥の部屋で。

「面白い事を教えてやろうか」

「何です藪から棒に」

例え気付いたとして誰が糾弾出来るのか。
片や一国の主、この国の主。
片や死霊使いの異名を取る大佐殿。
その噂を口にする事すら憚られる。

「この国は神の国だ」

「嗚呼脳まで溶けましたか」

「そして俺はその主だ」

「だから何です」

「つまり俺が神だ」

「あんたも馬鹿な人ですね」

国広しと言えども、上司をあんた呼ばわりする部下は一人。
別段腹をたてた様子もなく、王は笑った。
その振動を受けてか、大佐殿の表情が引き攣った。

「っ……――」

「そしてその馬鹿に付き合ってるお前も大概馬鹿だな」

「そう、ですね……。だからとっとと退いてくれませんか重いんですよいい加減歳を考えてください貴方は何時までも若くて結構ですが私は貴方程若くないんですよ肉体労働はしたくないんです」

乱れかけた呼吸から回復し。
造り物の赤を宿した双眸はきつく主を睨んだ。

「更に、俺が神だという事はお前は神の僕であるという事になる」

「本当に貴方は人の話を聞きませんね」

「即ち。『俺』が死ぬ時は『お前』も死ぬ時だ」

当然ですよ私は軍属ですからね。
何時もならそう突っぱねる戯言、今日に限って赤い眼の男は何も言わなかった。
調子のいい事を調子のいい口調で言っていたと思えば。
自称神は、笑ってはいなかった。
至極真面目に。

「お前と俺とはそういう構図で出来てんだよ」

滅多にそんな表情を見せないから。
色素の薄い肌を晒した大佐殿は、表情に出さずに狼狽する。
だから例えその真面目が近付いてきて、唇に噛み付かれたとしても。
普段の様に強く突き放す訳にはいかなかった。
舌を絡め取られ、ざらついた表面同士で撫でられても。
呼吸を奪われる程長い口付けから解放されると、会話の疎通がなりたたない二人の間に糸橋が架かった。

「……いいかジェイド。これは『神』の絶対命令だ」

耳元で囁かれ、言葉が直接脳へと響く。

「俺が生きている限りお前は死んではならない。お前が死ぬ時は俺が死ぬ時だ。俺が生きている限り、お前に死を認めない――」

傲慢だ。

「何を仰っているのか、解りかねますね」

「それはお前の理解力のせいだ――死ぬなっつてんだよ。分かったらイエスと言え。もちろん俺の命令だからな、ノーとは言わせないぜ」

軍属の癖に上質な髪を一房、掬い上げて神は笑った。
傲慢だ。
職権乱用も甚だしい。
否。
この状況すら、元々はこの男の職権乱用によって成されている。
『今更』だ。
それを重々承知だからなのだろうか。
死霊使いは、生きている主を前に溜息をついた。

「解りましたよ。いい加減自分勝手な人ですね」

さあ解ったからその躰を退けろ。
そう言わんばかりに睨みつけるものの、自分勝手な王は退く素振りなど微塵も見せずに笑っていた。
満足そうに。


誰がこの逢瀬を咎める事が出来るのだろう。
この神の国で。
神と、その寵愛を受けた男と。
――全ては神の御心の侭。

 

 

a

初PJにトライ。陛下が某探偵みたいな事になってますが。
いつかの日記にも書きました、旧約聖書云々から妄想が広がってます。
マルクト=神の国、というヤツです、どこでそんな知識つけたんですかね陛下。
ちなみにどういう状況で会話してるのかは、深く考えたら駄目ですよ。有難う御座いました(2006/03/06)