君に逢いたくて逢いたくて、なのに逢いたくなくて。前篇
ここ最近、夢の中でも俺はずっと考えてた。
何時その時が来るのかを。
――お前はもう、いらないんだよ。
最初からなかった存在。
何時消えても、可笑しくなんかない存在。
俺が消えても、誰も困らないんだ。
俺には『あいつ』が居るんだ。
『あいつ』だって、俺さえ居なければ。
だから……。
……本当は。
だけど――。
――俺は。
俺だって、『俺』として生きていたい。
考えれば考えるほど、脳とか内臓がぐるぐる廻る気がした。
気分が悪くて、ふわふわとした意識の中で俺は膝を抱えた。
夢なのに感触がする、どうやら俺は泣いているらしい。
何時もだったらだせぇな、って思うのに。
夢の中だから、どうでもよかった。
どうせ、此処には俺しか居ない。
一人ぼっちだ。
何時かは、こんな日が来るのかな。
誰も居ない世界。
ずっと、一人だけの世界。
嫌だと思う反面、諦めはついていた。
『あいつ』から光を奪って、ずっとその下で暮らしていた自分。
だけど、何時かは返さなくちゃいけないから。
そうしたらまた。
何もない世界に、俺は帰らなくちゃいけないのだろう。
ふと顔をあげる。
靄々としていると思っていた夢の世界。
気付けば、俺は立って居た。
何処かは分からない。
地面はあるが、上空である事は分かる。
風が強くてつめたい。
目の前には濃い霧がかかっていた。
――いや、これは雲かもしれない。
雲の向こうに影があった。
ゆらゆらと揺れる赤い影。
段々と遠ざかっていく。
あれは、人だ。
赤い、あれは。
「――――!!」
嗚呼どうして。
今一番逢いたくない人。
今一番、逢いたかった人。
なのに名前が、呼べないのは何故。
影が、振り返った。
→→→
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