rosy heart

 


注意:エルドラントです。ルクとアシュの一騎打ちの後です。嫌な予感がした人は引き返しましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(揺れて
揺れて

心が何も信じられないまま
咲いていたのは
――my rosy heart
揺れて
揺れて
この世界で
愛することも出来ぬまま
はかなく散ってゆくのか
花弁の様に)


――約束だからな!

――してやるから、さっさと行けッ!!


剣を手に取り、今にも泣きそうな表情でアイツは叫んだ。
扉の向こうへ消え去るアイツを俺は最後まで見送らなかった。
目の前に広がるのは、騎士団の連中。
恐らく全てレプリカか。
レプリカ。
代用品。

自分と同じモノの筈なのに。
アイツは俺の顔で俺の目の前で笑った。

つい先程の闘いを思う。
右利きの俺と左利きのアイツと。
構え方に若干差はあるものの、ほぼ『同じ』動き同じ技。
初めて会った時は、苛々する程弱かったアイツが。
一体何時どうやってどのようにして。
何が。
アイツを強くしたのか。

アイツに勝つ気などなかった。
恐らくは負けると。
俺には分かっていた。
あのチーグルを見て。
生きるのはアイツだと。
あの男を倒すのはアイツだと。

俺という存在は所詮『アッシュ』でしかないのだと。

家も家族も名前も、感情さえも全て捨てて生きてきた。
自分はもう、聖なる焔として輝く力は失ってしまったのだ。
分かっていた。
解っていた。
だからこのまま、燃え尽きてしまうのも良いと思っていた。

――だが。


「流石に、キツいか……」

奪った剣が弾かれる。
宙を舞ったそれを目で追う暇などない。
当身で怯んだ相手の腕を捻り上げ、別の剣を奪う。
そしてその奪った剣で、周囲に群がる敵を薙ぎ払った。
長い髪がここまで邪魔だと感じたのは初めてだった。

――アイツの様に切るか。

自嘲。
少しだけ笑えた。
これ以上似てたまるか。

間合いを計り、氷槍の雨を降らせる。
そして一瞬怯んだ其処へ、爆発を生じさせる。
これで結構の数を葬った筈。

気付けば息が上がっている。
だが未だ、敵は残っている。
この向こうへ行かせる訳にはいかない。

――約束。

去り際のあの表情が忘れられない。
俺に会う度に、様々な表情を見せてきたアイツ。
同じ顔の癖に。
俺の顔でそんな『顔』するんじゃねぇ、と。
思った事もあった。
ただ、先程見たあの表情は今まで見たどれとも違っていた。

たぶん俺は、アイツの本当の笑顔とやらを知らない。
会う度に口論になって、というかほとんどアイツが悪いのだが。
結局俺の頭に残ってるアイツの表情と言えば、何処か困っているような苦笑でしかない。
後は、先程の。
別にアイツの笑顔が見たい訳じゃない。
ただ。

――それが見る事が叶うのなら。
同じ顔、なのだから。

――俺も『笑い方』とやらを思い出せるだろうか。

そうすれば、アイツを困らす事もなくなるだろうか。

あの、泣きそうな表情を変えてやる事が出来るだろうか。


――結局は、ルークの笑顔が見たいだけか。

返り血を浴びながら、零れたのは自分への嘲笑だった。


静かになった。
天井の高い、この空間にこだまするのは自分の息づかいだけ。
赤の滴る剣。
指先から力が抜け、それは音を立てて床へと落ちた。

アイツは何処まで進んだだろうか。
俺はアイツへ回線を繋げる事に集中した。

背後で何かが動いた音にすら気付かない程。

(揺れて
揺れて

心が何も信じられないまま
咲いていたのは
――my rosy heart
揺れて
揺れて
この世界で
愛することも出来ぬまま
哀しい程鮮やかな
花弁の様に)

 

――( )LUNA SEA『ROSIA』

 

 

a

昔から知ってた曲ですが、サビの歌詞がどうもアッスくさかったので。
アッスが戦ってる時ってきっと、あの赤い髪がひらひら踊るんですよ。
花弁っぽいんだろうなぁ、と。でも重そうだけどね、髪。
書けば書くほどアッスが乙女化していく。何だこれ、この腐れ妄想頭。
有難う御座いました(2005/01/21)