失楽園 Ver.-Kratos

 

――虹が見える空を目指し いつも夢だけ追いかけてた


覚えているのは様々な表情。
もうすぐ二十にもなる青年の割に子供っぽい感情が溢れていて。
好奇心は旺盛だが飽きが早くて。
よく笑う子だった。
感情は豊かで全てに必死だった。
世界を救いたくて、神子を救いたくて。
自分に出来る何かを探して、必死だった。
理想を何とか現実にする為に、何時も必死で。


――あれから大人になった 君が幸せでいるなら
――……それでいい


年を数えるのにも飽きてしまった。
あの星を離れてどれだけの年月が経ったのかなど。
興味がないというよりも。
考えたくないだけだった。
もう自分と同じぐらいの年頃だろうか。
少しぐらいは落着きを持ってくれただろうか。
もうあの星のエクスフィアはなくなったのだろうか。
ならば、今は誰と何をして暮らしている……?
……答えのない問いかけは尽きない。


――こんな遠くにまで来てから気づいた
――夢に見た現実は 明りのない夜景みたい

――君が いないと


後悔はしていない。
あれにはあれの。
自分には自分の。
使命があるのだから、ずっとそう言い聞かせて。
ただ、自分を此処に送る際に見せた表情に。
未だに囚われている。
はじめて見た、泣きそうな表情。
神子と世界再生の真実を知った時よりも。
裏切られたと知った時よりも。
瞳の奥で揺らめいていた感情が忘れられない。
……何かを言おうとして開かれた口からは。
結局何の言葉も紡がれる事は無く。
伏せられた瞳、掲げられた剣。
あの星に何の未練も無かった筈なのに。
最後に見せられたあの表情が忘れられず。
もう届かぬ青い星へと手を伸ばしてしまう。


――君の悲しみを消し去る術を知らない僕は
――誰もいないEDENで声を枯らしてる

 

 

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何時までも親馬鹿なパパだといいな、なんて妄想。
歌詞引用はJanne Da ArcのEDEN〜君がいない〜より。
久々に曲を聴いたらモロクラロイクラ風味で思わず衝動書きしてまいました。
だから失楽園、なんて安易なタイトルに。有難う御座いました(2005/04/13)