手を伸ばして掴んだ先には
時々現れる症状。
ちゃんと整理をつけて、自分の中に仕舞って置いた。
その感情が。
今更、溢れだす時が、ある。
ルークは寝るのが早い。
特に昼間戦闘尽くめだった場合。
当然といえば当然なのだが、宿の部屋に入るなり、いきなりベッドに体を沈めてしまう。
しかもそのまま眠ってしまう。
武器の手入れぐらいしろよ、と何時も注意するものの、どうやら途中で一度起きるらしくその時にしていると言う。
確かに何時もマトモに使える状態ではあるが。
時々。
そうやってルークが早々に寝てしまって。
ジェイドが何処かへふらりと行ってしまう、時がある。
静かな部屋に、規則正しい呼吸音だけが響く時。
ふと。
昇華された筈の感情が、この手を動かす時がある。
仰向けで眠るルークへ。
この『男』の『父』は『自分』を。
そう思うだけで。
無防備に晒された喉へと、両手が。
――ファブレ。
「……ッ駄目だ」
肌に触れる寸前で、その手を引いた。
それは理性というより他の別の意識。
無意識に呼吸を止めていたらしい、口からは大量の息が吐き出された。
「いいよ」
後ろを向いた瞬間だった。
「それでガイの気がすむなら、俺は構わない」
後ろで、ルークが体を起こす気配がした。
「お……まえ、起きてたのか?」
「知ってたよ、たまに来てただろ」
ゆっくりと振り返ると、ルークは何故か笑っていた。
「怒らないのか」
「だってお前殺意ゼロじゃん。それでお前の気がすむならいいよ」
そう言って、更に笑みを深くした。
「……それに、そんなすぐに割り切れるワケねぇじゃん」
「ルーク……」
何時の間に、こんな表情をするようになったのかと考える。
考えている間に、目の前にルークが居た。
「だから、いいんだよ。ガイ」
ルークはそう言って手を取る。
その手の温かさを感じて。
何も言えなくなってしまった。
「お前は俺を待っててくれた、信じてくれた。だから俺も待ってる」
「ああ…………、有難う」
俺はやっと、其処で笑えた。
再び芽生えた感情。
この気持ちを裏切りたくないから。
きちんと昇華できるまで。
あと少しだから、もう少しだから。
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